※愛がありません、希望もあんまりありません。なにより九弁の心で九郎相手じゃありません。
描写はたいしたことありませんが、盛大にえろです。
弁慶さんが痛々しくても大丈夫というガッツ入った方のみ、↓スクロール
きみはいつもひかりのなかにいたから。
022. いつか見た夢
君はいつも光の中にいて、この色素の薄い瞳は輪郭すらうまく捉えられない。
強すぎる明るさは、まるで愛しい者を守るようにその面差しを影で覆い、
目を細めても笑っているのか、怒っているのか判断できない。
でも、よかった。
だからもう、きみのかたちがわからない。
「本当に面白い男よ、お主は…」
「誘い込むように悠然と微笑みながら、それでもその手はこの身に打ち縋ることはない。
快楽に酩酊しながらも、深い瞳の底は窺い知ることなどできない。
何が、お前の足を開かせるんだろうな…弁慶。」
…それも、儂の力、か。
くつくつと面白そうに嘲笑いしながら
秘められた場所にぶつりと張り形が突き入れられた。
「……っあ…あ……」
「……そんなお前を見ているときが一番」
堪えたが少しだけか細い悲鳴が漏れて、強い意志で開いたままの足先が揺れる瞬間。
「情や欲に塗れた女を征したときよりも、眩暈がするような恍惚を覚える…」
淫猥な黒い凶器を抜き挿しするぐちゅりという濡れたその音は、
この心に残る矜持を力と精で押し潰していく音だ。
それに為すすべなく声が零れ落ちる、瞳が燻っていく。
「……っ……」
ぎゅっと敷布を握りしめていた手を取られ、
自らの視野では見えない箇所に導かれる。
指先に冷たく、でもぬるりと濡れた感触が伝わって、その意図を理解した。
「……っ…く…」
怯えるそぶりを見せぬように、その柄に手をかけ、自らを犯す。
二、三度突き入れる動作の中で、その切っ先が弱い箇所を苛み、ビクビクと大腿が震えた。
快楽の前に滑稽なまでにのた打ち回る肢体を見せ付ける。
そんな不毛な自慰の前に、目の前の男は満ち足りたように唇を歪めていた。
力の強さを、名誉のつよさを知らしめるこの身体は
見上げる頭上に君臨するこの男にとってなによりも好ましい玩具なのだろう。
ただこの男の満足のためだけにと蜜と油で濡らした秘所は
蕩けるほど熱く拒絶を知らない。
「…あの頃はまだ、なにか秘めた策があったのだろう?」
源氏のもとでの諜報、という。
今は、なんのためにその身を開く?
「……源氏の総大将、あれもこのように籠絡したのか?」
「……っちが……ああ!!」
後ろにばかり意識を奪われていると、不意に目の前の男が動いた。
ぎりりと前の欲を、思いもよらぬ箇所を擦られ、
頑なにこらえた返事の代わりに嬌声が上がる。
膨らみ、己の腹に無造作に弾けた欲望の残滓を絡め取り、
その上の紅く色づく胸に塗りこめながら好色な笑みがこちらを伺った。
「……それは、一体どのようにお前をいたぶったのだろうな」
「…………」
その言葉に傷ついた顔を浮かべて見せれば、相対するその目に浮かぶ嘲笑。
満足げに歪められる口元はこの卑しい身体だけでなく、胸の中に住まうであろう尊い影まで貶めるため。
でも…よかった。眩しいから、瞳が光に弱いから、もう…君の元へ戻れないから。
目を細めても、記憶の糸を辿っても、大切なきみのかたちも笑顔もわからない。
……もうわすれた、から。
触れてきた優しさも、ぬくもりも、強がりも、甘えも。
まるでそれこそ、いつか遠い昔に見た夢のように儚く曖昧で。
だから汚されない。
薄汚れた自分に似合いの悪夢の中で、いつも思い描いた終焉の向こうに消えて行くとしても未練など残らない。
「……まあ、いい」
「……っん…んあ…!」
痛まぬ胸を抱えながら、瞳を伏せてみせる。
憔悴したように見えるであろうこの身の反応に満足したのか
さらに身体の奥深くに異物がねじ込まれた。
その乱暴な所作に酷い吐き気がこみ上げる。
けれどそれを悦楽の色に塗り替えてわざとらしく歓喜の悲鳴を上げれば、
ふん、と目の前の男が鼻を鳴らす音すら遠く霞む。
ぼんやりと遠ざかる意識が、落ちる先は決まってひとつ。
もう、唯ひとつの光を思い出すことも赦されない、煉獄の闇。