『ら』:ラプンツェル

柔らかな午後の日差しが差し込む窓に面した寝台の上。
見上げる貴方の思案に満ちた愁眉が語る願いはひとつ。

『どうか、もとの世界に』

もう慣れたけれども少し窮屈なこちらの装束に”不似合い”な長い髪は
寝台の上を滑り、目前に波打って延べられて。

『…兄上のもとに』

まだ叶わない願いの代わりにため息が零れる。
その音が届かないように、聞かないように
僕は隣りの寝台の上に寝そべったまま、
午睡の曖昧な視界の中で、感覚の霞む指先をのばす。

『どうか』

転がる視界から見上げた君は、
まるでこの突然放り出された自由すぎる世界に立つ誠実な搭だ。
その頂上の小さな、暗い世界に自らを閉じ込める虜囚。

…どうか、気がついて。
君ははぐれたのではなく、放たれたのだということを。
今までの世界こそが君を囲った運命の牢獄であったのだと。

反射して輝く、柔らかな手触りの髪に届かない指先。

こちらの世界の文章を読む練習に、と渡された童話の一節のように
その髪を僕に延べてくれたなら。
…遥か高みの君に届くかもしれないのに。

「……くろう…」

うたたねの最中、零れた哀願に君が振り返る。
睡魔の帳の向こうの呆れたような、慈しむようなまなざし。

『どうか』

…でも、どんなに手を伸ばしても、
その心に、固い誓いに僕の指先は届かない。

 
ら:ラプンツェル(九郎←弁慶)

らびりんすあいうえお作文。(本気だったんかい)
『ら』は裸しか思いつかなくて、携帯の辞書で一番に出てきた↑に。
現代のものをどのくらいどうしたらいいのか模索チュ-リハビリチュ-。
ベッド使用もうっかりうたたねる弁慶さんもいまいち想像できないですが
ピロートークばかりなら遥かなる時空の中でも現代でもあまり変わらない罠。

2006/03/16 harusame
 ++ text ++ null top ++